震えるほど素敵な純喫茶に出会ってしまった。
6月某日、コロナ禍が落ち着いたので
久しぶりにちょっぴり遠出をすることに。
向かった先は、名古屋市中村区の下之一色商店街。かつてここらへんは名古屋で唯一の漁港として栄えてたんだけど、昭和中期に大規模な台風で被災したことをきっかけに衰退してしまったんだって。
実際に行ってみるとリサーチ以上の廃れ具合で感動しつつ感傷に浸りつつ…
あっっっつい!!!!汗だくよ。だくだく。
とは言えほぼゴーストタウン(言い過ぎ)なので、涼をとるカフェ的なものは見当たらない。喫茶店の廃墟ならたくさんあるんだけど。
うだうだとシャッター街を歩いていると、「コーヒー」とだけ書かれた赤い立て看板が目に入った。見上げると2階に「珈琲 路花」の看板が。
ほう。この廃墟のような建物に喫茶店があるのね。
階段を覗いてみると、細くてかなり急勾配。
突き当りには大きな鏡がある。
なんだかコワイ。てかやってんのかな。
手すりにしがみつきながら階段をのぼってみる。
おぉ……!風格ある。
右手はアパート?のようになっていて、奥には共同便所があった。手洗い場のタイルが昭和ぅ。
さて、どうしよう。
「営業中」の札はかかってるけど、なんだか入りにくい雰囲気。
ドアの向こうからは、少し笑い声が聞こえる。お客さんいるのかな。横の小窓から背伸びをして覗いてみたけど、ちっとも見えやしない。
でももう暑いし気になるし暑いし気になるし暑いし………ええい。いざゆかん!オーーープン!!!!
冷房のひんやりとした空気が一気に体を冷やす。
薄暗い店内には誰もお客さんがいなくて、さっきの笑い声はテレビの音だとわかった。
テーブルが4つくらいの、こぢんまりとした店内。
マスターは、一瞬きょとんとしていたけど
すぐにおしぼりを渡してくれた。
何にする?と訊かれたので、コーヒー以外で冷たいものはあるか尋ねると、ソーダ水があると言われた。無味の炭酸水かなと思い、それを注文。
すると、綺麗なピンク色をした飲み物が運ばれてきた。
シロップのような、どこか懐かしい味。
氷たっぷりのソーダが火照った体に染み渡る。
底が照明に反射してオレンジに煌めいてた。
その後マスターは小さなおせんべいを2つくれて、そこから少し、話をした。
このお店は、もう50年くらいになるんだって。
マスターが21歳の時に始めたんだそう。
壁一面に貼ってあるラグは、当時水産高校に通ってた弟さんが、海外実習のお土産で買ってきてくれたらしい。ヴィンテージ感だけでも素敵なのに、情緒のあるエピソードにときめきが止まらん。
テーブルがボードゲームになってる…!
レトロ具合がツボできゅんきゅん。
ずっと見てたら破廉恥な映像が流れてたまげた。
そういうコンテンツもあるのか。
ボタンの配色も良き。
冷房もレトロ。何年働いてるんだろう。
照明、絵、椅子、灰皿。
そこにあるすべてが昭和の香りで溢れていて、昔のものが大好きな私にとっては、本当に本当に堪らない空間でした。
その後も、マスターはこの街の色々なことを教えてくれた。
魚市場が栄えていた頃の話。すぐ近くに70〜80年やってる銭湯があること。そして、温かい梅昆布茶を出してくれた。
ここ数年「レトロ」が流行っていて、内装やメニューを昭和チックにした飲食店をちらほら目にするようになった。
もちろんそういうお店も楽しいし好きなんだけどやっぱり路花みたいな純喫茶に来ると思いますね。「天然レトロ」には敵わん、と。
内装しかり、メニューしかり、心遣いしかり。
マスターが昭和の時代を生きてきたからこそ、
本物のレロロ(噛んだ)が実現しているんだと思いました。
そうこうしているうちに、常連客の方が1人、2人やってきて私もそろそろお店を出ることに。お会計、320円。やっす。
最後にマスターにお礼を言って、
愛すべき純喫茶・路花を後にしました。
なんだか、タイムスリップしたようなひと時だったな。昭和生きたことないけどさ。
また行こっと。
p.s
「路花」ってどういう意味なんだろう。
次行ったときは由来も聞きたいな。