東京

 

新橋駅の烏森口を入って横須賀線のホームに向かう途中、階段の横にある車椅子用のスロープに、おそうざいとワンカップを置いて晩酌を楽しむおじさんがいた。

ぎょっとした。二度見した。
やっぱり東京だなと思った。




東京にはびっくりするようなことをする人が多い。
“奇抜”では済まされないくらいスゴイ格好で街を練り歩く人。
無許可で不思議な楽器を演奏する人。
よく見たら裸同然の人。


(だから、月曜から夜ふかしという番組は東京そのものだと思う。)




あと、ホームレスも多い。
この間久しぶりに新宿に行って驚いた。
こんなにもたくさんの人が寒くて空腹な夜を過ごしてるんだ。



前から不思議だった。
ホームレスはなんで都会に集まるんだろうって。
田舎なら農家がたくさんあって使われてない廃墟もあるから、作物を盗んで食べたり、廃墟で暖をとることもできる。いや、本当はだめだけど。



それに比べて東京は、作物はないし、廃墟もないし、何より人目につく。
パリッとしたスーツを着て、自分たちには目もくれずに(もしくは蔑むように見下して)目の前を過ぎていく人たちを、彼らはどんな気持ちで見ているんだろうと。


ホームレスという選択をする理由は分かるけど、東京を選ぶ理由がわからなかった。





でも、今日、駅構内晩酌おじさんを見てふと思った。
東京でしかこんなことできない。



「こんなこと」なんて言い方は失礼で、「こういったこと」って言いたいんだけど。
多分、同じことを田舎でやったら排除される。
すぐに誰かが駅員さんに言いつけて、駅員さんもきっとちゃんと注意する。
それは、「街の安全を守るために変な人を排除するべきだ」という考えや、田舎特有の縄張り意識もあると思う。
奇妙な格好で道端を歩く人も、おかしな楽器を鳴らす人も、きっと排除されてしまう。




東京はどうだろう。
東京はよく、冷たい街だと言われる。
たしかに、他人感はある。
色々な人が東京に集まっていて、
皆がそれぞれに生きている。
必要以上に他人に干渉せず、
何かと割り切るのが東京だ。と思う。



そんな他人が集まる東京だからこそ、ホームレスが生きていけるんじゃないかなと。
見苦しいかもしれないけど、他人だから。
他人だから何も言わずに通り過ぎるから。
この人を排除してもしなくても、自分の人生が変わらないことを知っている。
それは、ホームレスだけじゃなくて、びっくりする行動をする人たちもみんな。
みんな、干渉されないから成立してる。





東京はよく冷たいと評される。
それが良いか悪いかは人それぞれ。
だけど、冷たい東京に居場所を見つけた人もいるということ。
かな。