誰かに聞いてほしいことほど、誰にも話したくない。

 

 

今日、大学の頃から使っていたパソコンを売った。


もうだいぶ前から調子が悪くて、
重すぎて動画が再生できなかったり
オフィスソフトがすぐ落ちたりしてたんだけど
なんとか使い続けたくて、
イライラしながらも使ってた。



でも、
とうとうワードすらまともに使えなくなって。
文章が書けないんじゃ話にならないので
手放すことを決意。もう充分使ったよね。








私はわりと思い切りがいい方で、
不要だと思ったものは、ジャンジャン捨てる。

でもこのパソコンをしばらく手放せなかったのは、
今は亡き父親に買ってもらったからだった。







大学生になってレポートを書き始めた頃、
私が「自分専用のパソコンがほしい」と言い出して
父御用達のヤマダ電機
車に乗って、2人で買いに行った。





店員さんに色々聞いて、
オフィスソフトが入ってて、
なるべく低価格のものをいくつか紹介してもらった。






その中で私の目に留まったのは、
ショッキングピンクのド派手なパソコン。
人前に出すのが恥ずかしいぐらいに派手。

でも私はそういう少し変わったものが好き。
いいじゃん。バービーみたいじゃん。

お父さん、これどうかな。

人と違う物が好きで、
当時、緑色の車に乗っていた父は
「いいね」と言った。










このパソコンを見る度、
そんな思い出が断片的に蘇る。



そんなこんなで手放せずにいたんだけど
もうさすがに何もできなくなったし、
父親が亡くなって少し時間も経ったし。
売ろう。決心がついた。





査定の1時間は商店街で時間を潰して
そろそろかな、と店に戻る。



ショッキングピンクのパソコンは、
レジ後ろの棚に並べられていた。
遠くからでも私のだとわかった。やっぱり目立つ。





店員さんに声をかけると
「問題ありませんでしたのでサインお願いします」
と紙を渡された。




サインを書く。
お金を受け取る。




ああそうか。もうお別れなのか。




そう思ったら喉の奥が熱くなって。
「すみません、写真撮ってもいいですか」
と聞いたらレジカウンターに置いてくれた。

店員さんが何か冗談を言ってたけど
なんだかよくわからないし聞こえなかった。




写真を2枚撮って、
涙目がばれないようにお礼を言って、
お店を出た瞬間に涙がこぼれた。





傘で顔を隠して、少しだけ泣きながら歩いた。
雨が降っていてよかった。